複数住所の巡回ルートをGoogle Maps APIとGASで自動最適化|寺院送迎『お寺タクシー』開発事例(生成AI不使用)
制作内容
複数の住所を巡るルートを「毎回手作業で組む」状態から外したい方へ
「複数の訪問先を回るルートを、毎回紙の名簿と地図、あるいはGoogleマップを何度も切り替えながら組み立てている」——送迎・配達・巡回・営業訪問・複数顧客の現地対応など、複数住所を順番に回る業務は多くの現場にありますが、ルート組みそのものが属人化しやすく、毎回それなりの時間がかかります。専用の配車SaaSや高額な物流ソリューションを入れるほどの規模ではない、けれど手作業の負担は確実にある——そんな現場で、自社業務にちょうどいい形で自動化したい方に向けた事例です。
この記事では、東京・江戸川区の 證大寺(しょうだいじ)様 が運営する昭和浄苑の無料送迎サービス「お寺タクシー」向けに、複数住所から最適な巡回ルートを自動生成する業務支援ツールを開発した事例を共有します。檀家向けの無料サービスという特殊条件もありましたが、根本にある「手作業のルート組みを、ちゃんと動く仕組みに置き換える」という構造は、業種を問わず応用できる考え方です。
この記事で伝えたいのは、生成AIに経路判断を任せず、Google Maps APIとGASで『ちゃんと動く』基盤を組んだ理由です。
- クライアント(公開許諾済): 續命院 法輪山 證大寺(浄土真宗)https://shoudaiji.or.jp/
- 対象サービス: お寺タクシー(昭和浄苑の無料送迎サービス)https://gold709040.studio.site/
クライアント概要
- 寺院: 續命院 法輪山 證大寺(浄土真宗)/東京都江戸川区/創建1200年の歴史を持つ寺院
- 運営墓地: 昭和浄苑(管理料永年無料・後継者不要・ペット同伴可)。霊園口コミ「いいお墓」で東京1位・全国3位を連続獲得
- 関連活動: 葬儀・法事・永代供養に加え、仏教人生相談、こども会、朝のお経配信など、檀家コミュニティへの寄り添いを幅広く実践
- 対象サービス(お寺タクシー): 昭和浄苑の参拝者向け無料送迎サービス。自宅 → 昭和浄苑(お墓参り) → 指定場所までを送り届ける運用で、ご家族・ご友人とのグループ利用や、病院・スーパーでの降車にも柔軟対応
- 依頼内容: 複数住所から、寺院・霊園を経由する巡回送迎の最適ルートを自動生成するツール
求められていたのは派手な配車ダッシュボードではなく、職員さんが普段使いの環境で、迷わず使える業務道具でした。
課題・依頼背景(Before)
お寺タクシーは料金収益を目的としたタクシー業ではなく、檀家サービスの一部として無料で提供されている送迎です。運営側に過剰な工数や月額コストがかかる仕組みは持ち込めません。
- 属人化: ルートを組むコツが特定の職員に集中し、不在時に業務が止まる
- やり直しコスト: 直前に1件追加・変更されるたびに、紙の地図でゼロから組み直し
- 寄り道への柔軟対応: 昭和浄苑への参拝が中核用途とはいえ、ご家族同乗での病院・スーパー寄り道にも応える必要があり、固定ルート化が難しい
- 既製サービスが合わない: 大手向け配車システムは機能過多・月額高額で、無料送迎を運営する寺院規模には「ちょうどいい」サイズがない
- AI任せには踏み切れない: 高齢のご檀家を乗せる業務であり、ルートの根拠が説明できないまま走らせられない
「自社で作る余裕はないが市販品はサイズが合わず、AIに丸投げも怖い」——寺院・非営利系の檀家向けサービスで頻出する谷間でした。
提案・解決アプローチ(思考プロセスを見せる)
最初に決めたのは、「生成AIに経路判断を任せないこと」 でした。
案A: 生成AIに住所リストを渡して経路を出させる構成
LLMに「最短ルートで並べ替えて」と頼む構成は、見た目は新しい。ただ、
- 根拠がブラックボックス: 「なぜその順番か」を職員さんに説明できない
- 再現性が低い: 同じ入力でも結果がブレる可能性が残る
- 表記ゆれを勝手に解釈されるリスク: 当日に違うご家庭にお迎えに行きかねない
無料送迎であっても——いや、檀家サービスとして無料で提供しているからこそ、寺院側がご檀家に対して負う運用責任は大きい。「AIが組んだので根拠は説明できません」では寺院側が運用責任を持てません。説明できない仕組みは寺院ビジネスに寄り添えていないと判断し、却下しました。
案B: Google Maps API + GAS で確実に動く構成(採用)
経路の根拠が説明できる枯れた技術で組む構成です。
- ジオコーディング: Google Maps APIで住所→緯度経度
- 距離・所要時間取得: Distance Matrix APIで全地点間マトリクス取得
- 巡回順最適化: マトリクスをもとに計算(昭和浄苑または寺院を起点・終点に固定)
- 実行基盤: GASにホスティング、Googleアカウントで開くだけ
- 出力: 並び替え後のリスト+Googleマップへのワンタップ連携リンク
「最適化の根拠は距離マトリクスです」と一言で説明できる。これが寺院が無料送迎サービスの運用責任を持てる構成だと考えました。
あえて採用しなかった選択肢
- 生成AIに経路判断を任せる: 説明責任が果たせない/再現性が低い
- 大手配車SaaSの導入: 月額が無料送迎の運営コスト感に過剰、学習コストも高い
- 専用モバイルアプリ化: 端末配布・ストア審査の運用コストを背負う。Webで十分
- 配車・予約管理機能の同梱: 学習コストを跳ね上げ、結局使われなくなる
「やらないこと」を先に握れたから、職員さんがその週のうちに迷わず使える道具に着地できました。
実装内容

技術スタック
- Google Maps API(Geocoding / Distance Matrix): 住所変換と地点間の距離・所要時間取得
- Google Apps Script(GAS): ロジック集約、Googleアカウントで動く
- Google スプレッドシート: 住所リストの入出力UI
- Google マップ連携: ワンタップでナビ起動
工夫した点
- 住所表記ゆれの吸収: ハイフン・全角半角・ビル名の有無に対応する正規化レイヤをGeocoding前段に
- 解決できない住所のフォールバック: 失敗行をリスト上で明示、手動修正可能に
- 出発地・帰着地の固定: 昭和浄苑または寺院を必ず起点・終点に置くオプション
- 寄り道対応: お墓参りを中核用途としつつ、病院・スーパー等の途中降車地点も柔軟に組み込める設計
- API呼び出しコストの抑制: 無料送迎の運営に負担にならない月額レンジに収めた
- マニュアル整備: 引き継ぎ可能な形で納品
派手な機能(リアルタイム追跡、AI予測等)は意図的に入れていません。
成果
- 毎週の送迎ルート組みを紙作業からツール起動へ:属人化を解消し、職員交代時にも回り続ける状態に
- 追加発注で機能拡張:要件外の住所正規化・マップ連携が評価され継続発注に
- 取引額:20〜30万円帯
- クライアントの声(要旨):丁寧な対応に加え、こちらが気づいていなかった必要機能まで提案してもらえた点が満足、というフィードバック
この案件で大事だったのは、出した数字より檀家向けの無料送迎が止まらず回り続けることでした。
私の働き様
β:検討プロセス(一人称で振り返り)
エピソード1:生成AIに経路判断を任せなかった理由(→ ちゃんと動く/思考プロセス)
「最新のAIに住所を渡してルートを出してもらいました」と言えば見栄えはします。でも、寺院がご檀家に対して運用責任を持つ無料送迎で、根拠が説明できない仕組みは持ち込めない。Google Maps APIの距離マトリクスなら「全地点間の所要時間から巡回順を計算しています」と一言で説明できます。説明できる技術=長く運用できる技術——AIに頼らないことが、この案件における誠実さでした。
エピソード2:要件外の機能を能動的に提案した理由(→ ビジネスに寄り添う/思考プロセス)
要件書には住所正規化・出発地固定・寄り道対応の話はありませんでした。ヒアリングで「実際の運用で何が起きるか」を聞く中で、書かれていないが現場で確実に必要な機能が見えました。お寺タクシーは昭和浄苑への参拝が中核用途ですが、ご家族同乗で病院やスーパーに寄るリクエストもある。書かれた要件だけ満たして納品しても現場で眠る道具になる——その未来は、檀家サービスを続けてきた寺院に寄り添えていません。
エピソード3:GASに載せた理由と、自社プロダクト化への展開(→ ちょうどいい/ちゃんと動く)
寺院側で長期に維持できる構成を考えれば、GASが「ちょうどいい」サイズでした。月額固定費がほぼかからず、職員さんの異動にも強い。無料送迎という性質上、運営側に新たな固定コストを生まないことは特に重要でした。さらにコア部分は業種を問わず汎用化できる手応えがあり、現在 Address Pickup Package として、設定代行と1ヶ月伴走支援込みのパッケージ販売を準備中です。1案件で終わらせず、同じ困りごとを抱える他事業者にも届ける——これも、ビジネスに寄り添うもう一段の体現方法です。
α:コミュニケーション抜粋(自分の発言だけ)
「経路最適化は、生成AIではなくGoogle Maps APIの距離マトリクスで組ませてください。根拠が説明できる構成のほうが、檀家向け無料送迎の運用責任に合います。」
「運用を想像すると、住所の表記ゆれ吸収と昭和浄苑を出発・帰着に固定するオプション、それから寄り道地点を柔軟に挟める設計が高頻度で必要になりそうです。先に組み込みたいです。」
「実行基盤はGASに載せます。長く維持できることと、無料送迎の運営に追加コストを増やさないことを最優先します。」
派手なAI活用アピールではなく、説明できる技術で「ちょうどいい」設計を能動的にお伝えする。これが要件外まで含めた信頼につながりました。
学び・横展開
- AIに任せるのが正解とは限らない:説明責任のある業務、特に無料サービスとして提供される送迎では、根拠が示せる枯れた技術のほうがビジネスに寄り添える
- 書かれた要件だけ作るのは、ときに寄り添えていない:ヒアリングで見えた必要機能(寄り道対応など)は能動的に提案する
- 小〜中規模事業者・非営利サービスには『ちょうどいいサイズ』が決定的に重要:月額固定費がかからないGAS構成は、無料送迎のように収益を伴わない運用にこそ向く
寺院・霊園の檀家送迎、訪問介護、地域コミュニティの送迎、ケータリング配送など、複数住所を毎日/毎週違う順番で回り、固定費を抑える必要がある業務であれば、本件の設計はそのまま応用可能です。
関連サービス
「派手な配車システムは要らないが、毎週の段取りを確実に肩代わりしてくれる道具がほしい」「AIに丸投げではなく、説明できる仕組みで運用したい」「無料サービスとして提供しているので運営側に固定コストを増やしたくない」という方は、以下のサービスをご覧ください。
- 情シス代行サービス: 業務支援ツールの設計・開発から運用伴走まで、月額制でお任せいただけます → /services/it-outsourcing/
ビジネスに寄り添う「ちょうどいい」自動化を相談したい方は、まず無料相談からお気軽にお声がけください。
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